久々の感動。[奇蹟がくれた数式]の感想

1729 この数字を見てあなたは何を思い浮かべますか? どうやら偉大なる数学者は、この数字に意味を見出すようです。 私たちの知らない世界からそれを導きだします。 私なんて到底理解し得ません。 まあ、それが当たり前ですが。 この映画では、ラマヌジャンというインドの若き天才が数学界に歴史を刻むストーリーを知ることができます。  

作品紹介

1914年、英国。ケンブリッジ大学の数学者ハーディは、遠くインドから届いた一通の手紙に夢中になる。そこには驚くべき“発見”が記されていた。ハーディは差出人の事務員ラマヌジャンを大学に招聘するのだが、学歴もなく身分も低いことから教授たちは拒絶する。孤独と過労で、重い病に倒れてしまうラマヌジャンの代わりに、ハーディは奇蹟の証明に立ち上がるのだが―。 amazon prime videoより引用

 

 

この映画の感想(*ネタバレ注意*)

この映画に込められた敬意

1900年初頭の出来事が記録され、ラマヌジャンの半生を立派に描いている映画ですが、同時に彼への大きな敬意を感じることができます。 この映画では、度々、ラマヌジャンが挑戦する難題に対し、「不可能だ!」というセリフあるいはニュアンスの含まれるセリフがあります。彼への偉業がどれだけ凄いことなのか、一般人の私達にもわかる表現で描かれています。 また、この映画で登場する数学者たちの名言がそれを教えてくれます。  

天才ラマヌジャンについて

数覚という言葉をご存知でしょうか。 数学的センスのようなものだと予断してたら、大きく意味は異なります。味覚や視覚のような感覚の一つとしての「数覚」という意味なのです。いわゆる動物的感覚。そして、驚くべきことにこの数覚は、生まれながらにして遺伝子レベルで備わっているというらしい。 数学が大嫌いな私にとっては、全く感じたことのない感覚だが。みんなに備わっているそう。 また、数学と言われて何をイメージしますか? 証明をしながら計算をし論理的に答えを導き出す、というのが多くの人がイメージする数学だと思います。 しかし、ある一部の人は、論理的にではなく、直感で答えを導くことができるそうです。 それが、数学者の中でも天才と呼ばれる人が持っている才能。 そして、おそらく主人公のラマヌジャンはこの才能を溢れるほど持っていたのでしょう。 誰もが不可能という難題を、彼の独創的な着想で公式を作り出し、それを論理的に証明する。 それを、ケンブリッジ大教授や王立協会フェロー(数学界に多大な貢献をした者に送られる王立協会からの会員資格)の前で成し遂げるのです。 まさに天才ですね。  

 

印象に残る名言

ラマヌジャン

どこから着想を得るか・・・女神です。ナマギーリが教えてくれる。僕が眠る時や祈る時、舌の上に数式を置いていく。 神の御心でなかったら方程式なんてなんの意味もない。

ラマヌジャンがハーディーの「どこから着想を得るのか」という質問に改めて答えるシーン。 そんな彼の名言は天才すぎて、筆者が意味を理解するのは困難でした。しかし、全体を通してみると、その真の意味がわかるんです。映画に意味を感じる瞬間がたまらないですね〜。  

 

ハーディー

彼の研究の重要性や数学の未来への影響力には、多くの意見があります。でも一つ確かなのは、深遠で揺るぎない独創性です。 公式は創るものではなく既に存在し、ラマヌジャンのような類稀なる知性が発見し証明するのを待っている。そして、最終的に私はこう思うしかありません。誰もラマヌジャンを疑うことはできない。

インド人という立場で誠実でない対応を受けて来たが、それでも数学界にとってどれだけ貴重な才能を持つ人物なのかをハーディーが訴えるシーン。このシーンで、ラマヌジャンの”神の御心でなかったら方程式なんてなんの意味もない”と強調された部分が超天才ぶりを証明し、改めてラマヌジャンへの敬意を感じます。

 

愛情の問題についてはそれを決定づける証明や法則もない。

ハーディーらしい最後の弟子へのアドバイスですね。どんなに天才な数学者でも、愛を数字では表せないようです。 すごく納得できました。  

 

リトルウッド(ハーディーとの共同研究を行った人物)

偉大な知性は貧しい出自からも現れる。
ラマヌジャンの存在はまさに奇蹟だ。彼は僕が理解し得るあらゆる知性を超えている。ヤコビどころかニュートンと比べていい。ラマヌジャンにとっては、あらゆる正の整数が親しい友達なのだ。

リトルウッドは、数学的な面では彼ら2人の下につく立場だが、彼の放つセリフは、全てに名言チックさが存在し、彼の言葉の意に敏感になってしまうほどです。好きな登場人物ですね。ハーディーにもすごく愛される人物です。  

 

感動シーン

ラマヌジャンが最終的にフェローとして認められた際、フェローの会員が、机を叩くシーン

このシーンは、たまらないですね。今まで、敵として扱われていたにも関わらず、最後には数学界に認められるというこのシーン、すごく感動しました。この瞬間からラマヌジャンが正式に歴史に名を残す偉大な人物と証明されたと考えると感慨深いですし、製作者側の表現の仕方がいいですね。 このシーンのような机を叩くのを、どこかで見たことあるのですが、、、思い出せません。

 

・1729という車のナンバーに意味を見出すシーン

これは、ハーディーとの別れの際の会話のシーンなのです。独創性があるからこそなのか、この番号が数学的に面白い番号になるということを話すんですよ。一見どうでもいい数字でも、知性や見方によって、意味のある数字になることを教えてくれます。数字だけでなく、私たちの生活できる範囲でもこれは見習うべきことだと感じましたね。

 

ラマヌジャンがハーディーに対して別れ際に「友よ」というシーン

作中でもずっと「あなたが真の友であれば私の着想が理解できる」ことをハーディーに話していたラマヌジャンが、最後に友として感謝を述べるんですよね。もう涙が止まらないシーンですよ。孤独であったラマヌジャンの心が、数学者としてでなく友として居てくれたハーディーの心と繋がった本当の瞬間でしたね。

 

ラマヌジャンが若くして亡くなった後、ハーディーが最後に式辞を読むシーン

ハーディーの人生の中で、彼と研究することが如何に幸せであったかが、全てこの式辞の中に込められているんです。 泣くことを我慢する姿は印象的でした。

 

まとめ

結局、どんな天才にも苦悩が付きまとうのは宿命なのでしょうか。 そこには、社会のいろんなしがらみがあって、それでも乗り越えられるからこそ、天才として歴史に名を刻むことができるのでしょうか。 一つ一つのセリフが重く、全体を通しての価値を感じる作品です。 ”偉大な知性は貧しい出自からも生まれる” 才能のあるものが潰れる社会はあってはならない。人種、性別、国籍、職種、学歴だけで蔑ろにされる社会を決して作ってはいけないのだと教えてくれました。 また、タイトルやジャンルからのイメージとは違い、すごく観やすい作品でした。いつの間にか作品が終わっていたのでびっくりです。 学生でも簡単に見ることができると思います。