そのメッセージは何か? 帰ってきたヒトラーを観た感想

帰ってきたヒトラー

これをコメディーというセクターで終わらせていいのだろうか。

それほど、この映画はタブーな問題に触れている。

私はドイツへの渡航経験は一切なく、ドイツ市民がどう感じているのかをここでは語ることができないが、あの最悪な歴史を知っている1人として、語ることはできるだろう。

歴史上最悪の独裁者と言われている人物を映画の中であれ、扱っていいのだろうか、という疑問ももちろん残った。

 

作品紹介

ヒトラーが現代によみがえり、モノマネ芸人として大スターになるというドイツのベストセラー小説を映画化。服装も顔もヒトラーにそっくりの男がリストラされたテレビマンによって見出され、テレビに出演させられるハメになった。男は戸惑いながらも、カメラの前で堂々と過激な演説を繰り出し、視聴者はその演説に度肝を抜かれる。かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸として人々に認知された男は、モノマネ芸人として人気を博していくが、男の正体は1945年から21世紀にタイムスリップしたヒトラー本人だった。ヒトラー役を演じるのは、舞台俳優オリバー・マスッチ。

 

感想

ヒトラーへの忠誠を誓うナチス式敬礼を市民が面白半分でやっているシーンやヒトラーのテレビ番組での沈黙シーンは、リアルな扇動シーンを想像させている

特にこの沈黙シーンは、当時のヒトラーの演説と重ねることで、1人の指導者のカリスマ性というものが宿っている瞬間に感じる。おそらく本物は、もっと凄かったのだろうが。。。

また、それを見ている民衆、敬礼ポーズをする民衆、サインを求める民衆を見ていると、たとえモノマネと思っていても、ヒトラーというタブーが現代では何と無く許容されているのが、とても恐ろしくなる。

このような小さなうねりが、第二のヒトラーを生むという悲劇になり得るというメッセージが込められているように感じる。

民主主義において、指導者を生み出すのはいつでも私たち民衆なのだ。どんな独裁者も小さな扇動から始まる。第二のヒトラーを生まないためにも私たち民衆が、学ばなければならないということを教えてくれる映画。この映画は、現代を生きる者全てに警告を出してくれてるのかもしれない。

ここまで語ると、重いドキュメンタリー映画のように感じる。 しかし、どこか笑えるようなコメディーチックという要素が、新鮮で見やすくなっている映画です。逆に、コメディーだからこそ伝えれるメッセージとなり、表現できるタブーな世界なのだろう。

 

まとめ

最後に、この映画に対してのまとめだ。 ヒトラーという独裁者を、コメディチックに現代に復活させた世界は、コメディだからこそ表現できる世界で、プスッと笑える瞬間は、映画をニュートラルな空間に仕上げている。 しかし、その反面、ヒトラーという人物も民衆の小さなうねりの中から、”政治”という世界に入り込もうとする姿は、またそれで恐ろしかった。その小さなうねりに気付く者とそうでない者の対比もうまく描かれているのがこの映画だ。 私たちに、二度とあの歴史を繰り返してはならないと教えてくれるメッセージ性の強い映画だった。